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さて、一昨日・昨日と、総務省から鹿児島県長島町に派遣され、弱冠30歳で副町長になった井上貴至さんの活躍ぶりをご紹介しました。今日も続けます。
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昨日は、町外に奨学金で進学しても、卒業後10年以内に町に戻ってくれば元金を町が創った基金から補てんするという画期的な「ぶり奨学プログラム」を、井上さんが考案したことを書きました。
では、町に戻ってきた若者をどのように受け入れようとしているのでしょうか?その問いに対して、井上さんは「回遊人材を受け止める町にしよう」と言っています。
人材を受け止めるためには「階段」が必要
それでは、回遊人材を受け止める町とは、どんな町なのでしょうか。
これまで地方の移住促進政策は、ゼロか100か、つまり定住するかしないかを迫るところがありました。
たとえば、移住するなら消防団に入りなさい、自治会に入って草刈りしなさい、それができないなら住めないよ、という感じでハードルが高かったのです。
これではなかなか人が寄ってきません。本当はゼロか100かではなく、途中に「階段」を設け、一時的に長島町を舞台に活躍してもらい、また別のところにステップアップするような関わり方があってもいい。ブリがいくつもの海を回遊するのと同じです。
さて、井上さんはどのような階段を作ろうとしているのでしょうか。
ユニークな地域活性化プランのコンテスト
井上さんは、長島町で大学生による地域活性化プランのコンテストを、ちょっと変わった形で実現しました。
こうしたコンテストは各地でよく開かれているのですが、長島町はそのプランが実現するまで帰れないよ、という形にしたのです。
プランを出すのは簡単ですが、本当に大変なのはまわりの人を巻き込んで実現することです。それを大学生に経験してもらいたくて、行きの飛行機代は出すけど途中でギブアップしたら歩いて帰ってください、実現したらみんなで拍手して送ってあげますという条件にしたのです。
そうすると、たいてい1~2カ月は長島町で暮らすことになるし、うまくいけば住み続けるかもしれない。それが、まさに「階段」と呼ぶ発想なのです。
長島町のブリが東大の学園祭へ
さらに、井上さんは「獅子島の子落とし塾」という取り組みを始めました。
獅子島は人口約700人の離島です。ここも高校はないので、子どもたちには身近な先輩がいません。その結果、勉強のやり方が分からなかったり、将来のロールモデルが少ないという問題が起きていました。
そこで、井上さんは自らの伝手で「美味しい魚食べない?」と東大や九大の学生に声をかけ、獅子島に来てもらって、中学生向けに2日間の塾を開いたのです。年齢が少し上の学生と触れ合うことで、勉強を教えてもらうだけでなく、同級生や大人に話しにくいことを相談してもらういい機会になりました。
今年のゴールデンウィークには、大学生が1週間、長島の公民館を借りて地元の小中学生に勉強を教えたそうです。また、今度は長島の良さを東京で伝えようと、養殖世界一を誇る長島町のブリを学生たちが仕入れて東大の学園祭でブリ丼を販売したのです。
このように最初は小さな階段から人や食材を好きになってもらい、そこからつながりが広がっていくというわけです。
今では、ボランティアの学生だけでなく、社会人経験のある人も移住してきているそうですが、さて、井上さんは総務省からの派遣なので、当然赴任の期限があります。井上さんがいなくなったあと、長島町はどうなるのでしょうか?
・・・今日も長くなってきましたので、続きは次回に。
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というわけで、今日はここまでにしましょう。
ではまた!
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(2016.7.21記)