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さて、内閣府は先日 (2016.8.2)、地方創生に取り組む自治体に寄付した企業が法人住民税などの控除を受けられる「企業版ふるさと納税」について、第1弾として102の対象事業を決定したと発表しました。(こちらの発表資料参照)
「企業版ふるさと納税」とは?
企業版ふるさと納税については、まだ国会で審議中だった今年の3月、当ブログで取り上げたことがあります。(こちらの記事参照)
この制度は、総務相時代にふるさと納税を発案した菅義偉官房長官が2015年6月に提唱し、制度の検討を関係省庁に働きかけて具体化しました。
この制度では、企業が自治体の事業に寄付をすると、寄付額の30%が税額控除されます。現在の寄付税制でも、全額を損金計上すると約30%税金負担が軽減されるので、企業版ふるさと納税と合わせると、約60%の税金が軽減されるわけです。
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対象の自治体には、3大都市圏の地方交付金を配分されていない自治体 (東京都や東京23区など) は含まれていません。
対象となる事業は、自治体の地方創生総合戦略に位置づけられた中で、自治体が地域再生計画を策定し、政府の認定を受けたものに限られます。
今回認定された102の対象事業
今回認定されたのは、北海道夕張市のコンパクトシティー推進事業や鳥取県江府町の農業の6次産業化など、6県81市町村が申請していた102の事業で、全体事業費は323億円です。
事業分野別の認定状況は、次の表の通りです。
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夕張市は、児童館や図書館が入る複合施設の市中心部への整備や天然ガス採取調査を実施し、家具販売大手のニトリホールディングスから4年間で5億円の寄付を受ける計画です。
江府町については、東京都内にある研究機能の一部を同町に移す飲料品製造のサントリープロダクツが、特産品の玄ソバの加工、販売など6次産業化事業に寄付する予定になっています。
認定は今回が初めてで、それぞれの事業にかかる費用が確定した段階で、企業は寄付ができるようになります。内閣府は、今年11月と来年3月にも認定を出す方針としています。
最後に
今回の企業版ふるさと納税の第一弾が認定されたタイミングは、たまたま安倍内閣の改造人事のニュースが注目されている時期で、何か目立たなかった印象があります。
それはさておき、現在の地方自治体は、税収の減少や地方交付税の削減などで、どこも苦しい財政事情です。国からの財源移譲もなかなか実現していません。
企業版ふるさと納税の認定を目指して、優れた事業プランを設計すれば、民間資金を大いに活用することが可能になります。また、優れた事業プランを提出すべく、自治体同士が競い合う効果も見込まれます。
この制度によって、企業の本社が集中する東京などが減収となり、都市と地方の税収格差が縮まることが期待されています。
一方で、地方自治体と企業の癒着や、関係の歪みといった問題が起きないか、と懸念される点もあります。例えば、「寄附の見返りを求める」「寄附をエサに、営業活動を行う」といった企業が出てくる恐れがあります。
いずれにしても、プラスの効果があれば、マイナス効果という反作用も付きものです。今後の運用の中で、マイナス部分を最小に留めていくことが求められます。
そうした工夫により、地方創生という日本の将来が懸かっている課題の解決に、是非貢献して欲しいと願っています。
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さて、今日はここまでにしましょう。
ではまた!
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(2016.8.4記)