さて、環太平洋経済連携協定 (TPP) 承認案の審議を巡って停滞していた国会が、一昨日 (2016.4.14) 午前にやっと正常化しました。
そして、同日午後の衆院本会議で「地方創生推進交付金」や「企業版ふるさと納税」を盛り込んだ改正地域再生法がやっと成立しました。(こちらの記事参照)
改正地域再生法とは
地域再生法の改正案を巡っては、先日 (2016.3.15) 石破茂地方創生担当大臣が、法案の提案理由説明で誤った法案文書を読み上げるという前代未聞の出来事が起きたことが記憶に新しいですね。
その時のことについては、このブログでも記事にしました。
そもそも、ベースとなった地域再生法は、平成17年 (2005年) 4月1日に公布されたもので、地域の活性化に取り組む地方自治体を国が一体的に支援することを目的に制定されたのです。
その後、数度の改正を経ていますが、最近では2014年11月に、地方創生の理念等を定めた「まち・ひと・しごと創生法」と共に「地域再生法の一部を改正する法律」が、地方創生関連2法案として成立しています。
今回の主な改正内容
今回の改正では、地域活性化を後押しする「地方創生推進交付金」や、企業が自治体に寄付すると減税となる「企業版ふるさと納税」に関する規定が盛り込まれました。
総額1,000億円の「地方創生推進交付金」は、今年夏をめどに交付される予定になっています。
自治体の人口減少対策の5カ年計画「地方版総合戦略」の実行を支援することが目的です。
他の自治体のモデルとなるような優れた地方版戦略の事業を盛り込んだ「地域再生計画」を国に提出すれば、配分を受けられるのです。
ただ、一部の自治体からは計画申請の厳格化による煩雑さが指摘され、早くも「使いにくい制度」という指摘が出ているとか。
「企業版ふるさと納税」は、地方版戦略に記載された事業を対象とし、既存の寄付制度の軽減分と合わせ、企業の寄付額の約60%が減税となります。
これについては、このブログでも以下の記事に纏めました。
” 地方創生応援税制 (企業版ふるさと納税)” が実現すれば、企業の寄付金の60%が税額控除に!
記事にも記載した通り、企業版ふるさと納税は、総務相時代にふるさと納税を発案した菅義偉官房長官が2015年6月に提唱し、制度の検討を関係省庁に働きかけて具体化したものです。
対象となる事業は、自治体が地域再生計画を策定し、政府の認定を受けたものに限られます。優れた事業プランを設計して政府の認定を受ければ、民間資金を取り込みやすくなるでしょう。
その一方で、「寄附の見返りを求める」「寄附をエサに、営業活動を行う」といった企業が出てくる恐れがあり、地方自治体と企業の癒着や、関係の歪みといった問題が起こる懸念も指摘されています。
そのため、企業がふるさと納税を活用するに当たっては、その目的や内容を明らかにするなど、ガラス張りの開示が求められます。
最後に
「地方創生推進交付金」ですが、2015年度の補正予算で1,000億円が計上された「地方創生加速化交付金」と同額が、2016年度の予算に組み込まれました。
地方創生加速化交付金の申請と認可を巡っては、このブログの記事でご紹介した通り、地方自治体によっては、この事業プランで何千万円も交付金を受けるのか?という内容のものも散見されました。
1,926件の事業が交付対象事業になりましたが、約1ヶ月という短期間で審査をしたのですから、内容を精査できず要件チェックに留まったのではないか、という懸念が残ります。
また、地方自治体によっては「重要業績評価指標 (KPI) の設定や効果測定方法などの面倒な申請手続きがあって使いにくい。予算だけくれればいいのに…」という空気があるようです。
かつて竹下政権時代に「ふるさと創生」予算として1億円が配られ、「ふるさと資料館」などの不要といっていい箱物が、全国にどれだけ作られたか…予算だけつけたら、その二の舞にならないでしょうか?
今年度の地方創生推進交付金が、実態の伴う効果的な事業プランに配分されることを願ってやみません。
「企業版ふるさと納税」も、地方自治体と企業の癒着や関係の歪みが生じないように、その運用には厳格さが求められるでしょう。
いずれにしても、主役は地方自治体です。一日も早く他の自治体の参考モデルになるような成功事例が誕生するといいですね。
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さて、今日はここまでにしましょう。
ではまた!
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(2016.4.16記)