さて、昨日は安倍総理が「地方創生元年」と名付けた2015年度を振り返り、政府と中央省庁の間にある温度差について書いてみました。
今日は、地方創生の主役といえる地方自治体について、振り返ってみます。
地方自治体の多くは、補助金・交付金頼み?
政府は、2015年度補正予算で「地方創生加速化交付金」として1,000億円を計上しました。2016年度には「地方創生推進交付金」1,000億円の創設を予定しています。
これら交付金を受けるためには、地方自治体が事業案を提出し、中央で評価認定されなければなりません。
単に財源を地方に渡せば、単なるバラマキとなり、過去の「ふるさと創生」資金のように維持管理費ばかりかかる箱物の建設に終わるのでは、という反省に立ってのことだと思います。
以前、このブログ記事「“地方創生” は、過去の失敗事例に学べるのか?」で書いたように、かつてお役所には失敗事例は存在しなかったようです。
つまり、国から都道府県・市町村に対して補助金・交付金などの予算をつけ、例えば商業施設などを作れば、その時点で計画達成としていたわけです。
その後、その商業施設の運営が上手くいっているのか、きちんと採算は取れているのか、という視点はどうやら存在しなかったようです。
そのため、地方自治体が申請する事業を評価認定する仕組みとして導入したのが、KPI (重要業績評価指標) の設定とその実績評価です。
形式的な評価になっていないか?
こうしたKPIや効果測定の仕組みを導入したのは良いとして、問題は実態としてそれが効果的に運用されるかどうかです。
つい先日 (2016年3月18日)、「地方創生加速化交付金」の対象事業が決定した、と政府から発表がありました。
対象事業1,926件 (総額906億円) 全てを確認したわけではありませんが、中には次のように首を傾げざるを得ない KPI (重要業績評価指標) の事業もありました。
いずれもクリックすると拡大表示しますが、各表の下部に<重要業績評価指標 (KPI) >の記載があります。
これらはどう見ても、他の地方自治体の事業計画と比較して低い目標数値なのです。こうした事業に何千万円も交付金を支給してもいいのでしょうか?
推測に過ぎませんが、短期間に申請を求められ、かつ効果測定が義務付けられたため、地方自治体によっては目標を低く見積もって申請したところもあるのではないでしょうか?
地方自治体自身が、精力的に取り組み、これはチャンスだと考えているのか、中央に指示されたから渋々やらされていると感じているのか、自治体によって温度差はありそうです。
また、申請件数が膨大な中、1ヶ月で内容を評価し、認定しなければならない中央で、精緻な評価が可能だったのでしょうか?要件を具備しているかどうか、といった形式的な評価になっていなかったのでしょうか?
最後に
いずれにしても、政府・中央省庁・地方自治体それぞれの言い分はあると思いますが、まずは中央の監督指示がなくても、地方が自律的に機能するレベルになる必要があると考えます。
その上で、中央が手放したがらない権限と財源を地方に譲渡する地方分権の道を政治主導で進めることが、一見回り道のようでいて、まずは通らなければならない道であるように思います。
地方創生とは、短兵急に進めることが不可能な取り組みであり、ましてや夏の参議院選挙の票に繋がるかどうか、などという近視眼的な姿勢で取り組むものではありません。
日本の将来を見据えて、人口が減少していく中で、その減少率を極力低くすべく取り組み、かつ日本の政治・行政の構造改革をする取り組みに他ならないのではないでしょうか。
地方自治体によっては、「何をしたって過疎化・限界集落化は避けられないよ…何をやったって無駄だ…」という雰囲気もあるとか。諦めたらそこでアウトです。
できることを、コツコツと積み上げていく…これは一個人の生き方と共通することではないでしょうか?
・・・ということで、地方創生に関して、この1年間を振り返ってみて感じることを書いてみました。
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さて、今日はここまでにしましょう。
ではまた!
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(2016.4.7記)