さて、今日は日経新聞の『イオン、地域密着型の取り組み「地域エコシステム」千葉市から開始』というニュース記事を読んで感じたことを書いてみます。
住みたくなる地域づくりへ
イオンのビジネスの中心は小売業であり、国内外に広く展開しているのは周知の事実ですね。
とはいえ、基本的には地域に根付いてこそ成功するビジネスです。そして、地域へ還元することは、自社ビジネスを成長させることにもつながり、住民にもイオンにもメリットをもたらします。
また、千葉市は国家戦略特区に指定されていて、新たな取り組みを展開しやすい地域です。
「地域エコシステムづくり」といった取り組みを一気に全国に展開するのは難しいため、実証実験に協力してくれる地域を探していたイオンにしてみれば、イオングループの本社がある千葉市がその候補地に挙がったのは当然のことでしょう。
また、連携企業はイオンだけでなく、日本郵政グループや三越伊勢丹ホールディングス、京成電鉄、日本航空なども既に参加を表明しているようです。
こうして、イオンと千葉市が中心となり、千葉市民が「ここに住んで良かった!」と思える地域づくりが開始されたのです。
「地域エコシステム」とは
それでは、「地域エコシステム」とはどのようなものなのでしょうか?
こちらの記事によると、その実現のための4つの柱が紹介されています。
「デジタリゼーションよるストレスフリーな体験」とは、駅やイベント会場の近くにいる人に向けて、ITを活用したエリアチェックイン・プッシュ通知・バーチャル試着・スマートペイなどの機能を提供することにより、日々の生活をより便利にすることを指します。
「地域内の交通・移動の進化」とは、電車・バス・タクシーなどの公共交通機関をオンデマンドで結ぶ交通網の実現などの住民の移動だけではなく、荷物の移動も短時間配送や受取場所の自由度向上などの体制を整えていくことです。
「身も心も豊かに暮らせるまちづくり」とは、例えばモールウォーク。全天候型施設のイオンモールでは、屋内の快適な空間でウォーキングが可能。歩いた歩数分の健康ポイント発行で、高齢者などの健康づくりに役立てることを目指します。
「地域経済・価値の拡大と還流」とは、ポイント・バリューを通じた地域活性化として、多業種によるオープンなアライアンスを前提として、色々な場所で使えるポイントシステムの導入を目指し、その地域に住むメリットを提供していきます。
そして、2016年5月4日には、イオンモール幕張新都心でお披露目体験会が予定されているそうです。
体験会では、4つの柱として挙げられたデジタリゼーション、モビリティ、ヘルス&ウェルネス、ポイント・バリューについて、実際にその効果を体験できるイベントが用意されるとか。
まとめ
これまで、地域づくりにおいて行政がパートナーに選んできたのは、市民団体やNPO法人などが中心でした。
しかし、千葉市は早くから私企業であるイオンとの協力体制を築いてきており、例えば2013年の千葉市長選挙では、駅に近いショッピングモールに投票所を設置した結果、大きく投票率がアップするなどの実績を挙げています。
こうした取り組み実績を背景に、千葉市長は「ビジネスとして持続可能な方法を編み出してきた企業のノウハウを、市政にも取り入れていける」と自信を見せています。
一方、企業と行政がパートナーシップを組んで活動を進めていく中で、既存の規定に触れる部分が出てくることが予想されます。
それについても、千葉市長は「その場合には千葉市が国家戦略特区であることも活かして、必要な規制緩和も実施していきたい」と、既存の枠組みにとらわれずに取り組んでいく強い姿勢を見せています。
以前、こちらのブログ記事でご紹介したように、地方創生のためには「産官学金労言」の連携が重要であると、石破茂地方創生担当大臣は力説しています。
「産官学金労言」とは、産 → 民間企業、官 → 市役所・町村役場、学 → 高校・大学、金 → 地方銀行、労 → 労働組合、言 → 地方のメディア、を指しています。
今回のイオン・千葉市を中心とした「地域エコシステム」への取り組みも、多くの関係者が連携していこうとしています。
関係者が多いほど、その利害調整などに手間と時間がかかることは容易に想像されますが、総論賛成・各論反対を極力排して、短期間に実効が挙がることを期待したいと思います。
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さて、今日はここまでにしましょう。
ではまた!
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(2016.4.15記)