さて今日は、毎日新聞のサイトに掲載された「論点 消費者庁の徳島移転構想」という記事について確認してみます
中央省庁の地方移転構想
当ブログでも度々取り上げてきましたが、中央省庁の地方移転については、先日文化庁の京都移転が正式に決定した他は、鳴り物入りで検討された割に尻すぼみの印象を免れない結果となっています。
その中で、徳島県が提案した消費者庁の移転については、実証実験を経て8月までに結論を得る、としています。
この動きに対して、特に消費者の利益を守る団体から激しい反発が出ている一方で、地方で働く側からは中央省庁で働く人々の移転検討に取り組む「本気度」に疑問の声が上がっています。
消費者庁移転に反対する意見
毎日新聞のサイトでは、移転反対の意見を、野々山宏・日本弁護士連合会消費者問題対策委員長が述べています。
その要点は、以下の通りです。
- 消費者庁だけを地方に移せば、司令塔機能や緊急時対応、情報発信、監視の機能が低下し、国民生活の安心・安全を脅かす
- 消費者庁は、事業者と消費者という対立軸の中に入って司令塔機能を担うため、関係省庁を含めた各種調整が必要で、それには対面して交渉する必要がある
- 組織内部の話し合いはテレビ会議で可能だろうが、対立する意見調整のためには、顔を突き合わせて話し合う必要がある
- 消費者行政が後退すれば、国民がつけを払わされることになる
中央省庁の東京一極集中は避けるべきとする意見
そして、災害が多い日本では、民間と同様に中央省庁も首都圏への集中は避けるべきとする意見を、隅田徹・映像処理会社「えんがわ」社長が述べています。
隅田社長は、東京・恵比寿にある映像処理会社「プラットイーズ」の社員の一部が働く「えんがわオフィス」を2013年7月、徳島県神山町の古民家で開設しました。
隅田社長の意見の要点は、以下の通りです。
- 「えんがわオフィス」には、本社の役員も常駐しており、災害時には本社の業務を継続する役割も担う
- ベンチャー企業と国の省庁では事情は異なるだろうが、離れた場所を結んだ業務は秘密の保護も含めて技術的に可能
- 中央省庁の移転ができるか否かは、技術の問題ではなく、やる気次第
- 移転実施に際してはためらったのも事実だが。結果として神山に移ったため失った顧客はなく、業務への支障も驚くほどなかった
- 消費者庁の場合、国会や他の省庁、関係団体との関係も含めて業務を見直し、働き方を変える必要があるのではないか
- 消費者庁だけで検討すれば、できない理由ばかりが列挙されるので、中央省庁の在り方や働き方を見直すための組織が必要ではないか
- 省庁が動けば、私たちよりもっと大きな会社が動く可能性がある
最後に
「えんがわ」の隅田社長の次の意見は、傾聴に値すると思います。
「中央省庁の移転ができるか否かは、技術の問題ではなく、やる気次第」
だいぶ昔のことになりますが、京セラ社長時代の稲盛和夫氏のエピソードを思い出しました。
京セラの開発会議の席で、ある開発案件について、関係部門から次々に開発に対する反対意見が出されたそうです。
当時の稲森社長は、目をつぶって黙って最後まで聞いていました。そして、反対意見が出尽くしたところで、開発部門に対して、おもむろにこう言ったそうです。
「そういうことだ。だから、やれ 。」
反対意見を全て含んだ上で、だからやるな、ではなくて、それでもなんとしても開発しろ、というトップの強い意思とリーダーシップを感じるエピソードですね。
中央省庁は、効率性から考えたらなんといっても東京に集中している方がいいに決まってます。中央省庁の地方移転なんて、あり得ないでしょう。
それでも、東京一極集中によるリスクを勘案したら、効率性を犠牲にしても地方分散が必要だ、とする判断もありでしょう。
そして、それを前に進めるのなら、政治が強い意思とリーダーシップを発揮しなければ到底不可能と思われます。
「えんがわ」の隅田社長は、インタビューの最後にこう答えたそうです。
「何かを変える一番手になるのはとても大変で、勇気が必要。東京から動いても動かなくても賛否がある。敬意を払って注目したい。」
・・・というわけで、今後の動きを見守りたいと思います。
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さて、今日はここまでにしましょう。
ではまた!
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(2016.5.1記)