さて、一昨日・昨日と「日本版CCRC」構想の概要と政府の方針、地方自治体の取組状況を見てきました。今日は、これまでのシニア住宅との違いや課題などについて確認したいと思います。
高齢者が社会の担い手の一員となるコミュニティ
従来のシニア住宅が居住機能と介護機能中心であったのに対して、日本版CCRCはコミュニティ機能、社会参加機能、多世代共創機能、さらにそれらを総合的に企画調整する全体マネジメント機能で構成されるとしています。
(資料出典元 : 三菱総合研究所プラチナ社会研究会)
特に居住者が従来のような支えられる人でなく、「担い手」となる視点と、介護保険に依存した介護インセンティブから健康を維持する健康インセンティブの視点が重要です。
また、米国のCCRCは塀に囲われたゲーティッド・コミュニティだそうですが、日本版CCRCは地域に開かれた街まるごとを目指しています。
CCRCは民・公・産の三方一両得を目指す
CCRCは、健康時から介護時まで継続的ケアを提供するコミュニティです。全米では、約2千ヵ所、居住者約70万人、約3兆円という市場規模を誇っています。
「なるべく介護を必要としない」ために、予防医療、健康支援、社会参加などが緻密にプログラム化されています。
介護保険のない米国では、介護度が上がると事業者のコスト増になります。そのため、介護にさせない、健康寿命延伸、いわゆるPPK (ピンピンコロリ) の取組みが、介護保険に依存した日本のシニア住宅と異なる逆転の発想となっています。
さらに介護・ヘルパー以外の健康ビッグデータ分析、ソーシャルワーカー、プログラム開発、ホスピタリティなどの新たな職業が生れ、地域に雇用と税収をもたらしています。
CCRCは、居住者の健康、地域の雇用・税収創出、新産業創出という民・公・産の三方一両得を実現するものなのです。
日本型CCRCの課題
最後に、日本型CCRCを実現させるために乗り越えなければならない課題を見てみましょう。
CCRCの重要性は理解しながらも、まず出てくるのが「米国と日本は国民性が違う」「制度が違う」という反応です。
やはり、大切なのは米国モデルの良さを活かしつつ、日本の社会特性や地域性、既存の制度に合致した日本版モデルを早急に示すことでしょう。
また、すべての自治体が高齢者の移住に賛同しているわけではありません。送り出す側になる首都圏の首長からも「無理に高齢者を地方へ移住させるのには違和感がある」(黒岩祐治神奈川県知事)、「施設が足りないから移住というのは乱暴」(舛添要一東京都知事)など疑問の声が上がっています。
受け入れ側にも「平成の姥捨て山」「数合わせの押しつけ」などと反発する声が根強く残っています。
高齢者介護や医療の負担だけを押しつけられたのでは、地方の衰退を加速することになりかねないという懸念があるからです。「過疎が進む地域に高齢者は不要」「小規模自治体は単独で取り組めない」などの声も聞かれます。
健康で移住する人は、何らかの就労の場を求めるでしょう。どうやって雇用の場を確保するのかも課題です。
移住した高齢者が集まって住む拠点を作ったところで、地域から孤立してしまったのでは意味がありません。
住み慣れたわが家を離れても良いと思えるだけの魅力を提示し、地域を挙げて受け入れることができるのか。政府と自治体が乗り越えなければならないハードルは高いと言えます。
最後に
日本型CCRCは、単なる人口減少と高齢化への「対応策」というより、もっと世界が注目するような夢のあるプロジェクトとして成功して欲しい、と思っています。
CCRCに移住したシニアの方が、このコミュニティで生き生きと活躍し、その様子を年賀状やブログで誇らしく紹介できるようになったらいいですね。
そのコミュニティでは、シニア世代だけではなく、若い世代も活躍していて、多世代交流によるシナジーが生まれることが期待できます。
夢のあるシニアライフを過ごしたいですよね!
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さて、今日はここまでにしましょう。
ではまた!
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(2016.6.2記)