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さて、昨日は先日決定した「第1回 日本サービス大賞」の内、「地方創生大臣賞」計8件をご紹介しました。(こちらのサイト参照)
今日は、その中で注目すべき事例を具体的に見てみましょう。
ITを活用して、24時間対応の在宅医療を実現
注目した受賞サービスは、「在宅医療により地域を再生するへき地医療サービス」です。
選考理由には、極めて過酷なへき地医療において、担当医師の負担が少なく住民患者からも喜ばれる、持続的かつ他地域へ展開可能なへき地医療を実現したサービスと記載されています。
受賞者は、愛媛県の医療法人ゆうの森。医療から介護まで一体化した在宅専門クリニックの診療に加え、松山から100km離れた過疎地域である西予市の診療所を運営しています。
この診療所は、年間3,000万の赤字が続き、廃止の危機にさらされていました。過疎地域に医師を呼ぶには高額な報酬が必要なため、地域の診療所の多くが財政上の問題を抱えています。
しかしながら、診療所の存続を願う住民の声を聞いた永井理事長は、この診療所と現在松山市にあるクリニックと一体運用することで、赤字を解消する方法を考案し、運営を引き継ぎました。
現在は、ゆうの森の医師が日替わりで西予市の診療所に通い、24時間365日の運用体制で、患者の包括ケアを行っています。
複数の医師が毎日交代で患者を診察していくため、医療スタッフ間で引き継ぎが円滑な業務遂行の要となります。
そこで、ゆうの森では、診療情報、介護記録、投薬管理、日々の申し送りや過去の入院情報をサイボウズが提供するシステム (kintone) で患者ごとに管理し、 栄養士、事務員、理学療法士、薬剤師、ヘルパー、医師、看護師、ケアマネージャーなど、患者と関わるスタッフがリアルタイムに情報を共有する仕組みを取り入れました。
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これにより、クリニック全体で患者を見守る体制を整えられ、広域でのきめ細かな医療活動の実現につながっています。
ゆうの森は、このシステムを活用し引き継ぎからわずか4ヶ月で西予市の診療所の黒字化に成功。ITを活用し、へき地診療所を再生させた模範的事例として、今回の受賞に至りました。
へき地医療の優れたモデルケースに
クリニックの周辺には、介護施設や薬局の進出等の関連市場も生まれ、へき地医療を志す若い研修医が増えるなど、へき地医療の優れたモデルとして評価されています。
どんなへき地であっても、インターネットに繋がる環境さえあれば、ITを活用することで、都市部と同様の診療所経営が可能であることを証明したことは大きな功績だと思います。
クリニックも赤字が続けば潰れてしまいます。黒字をキープして経営することは、へき地医療の大きな課題でした。
その課題をクリアしたことで、今後全国各地で同様の取り組みが進むことを期待したいと思います。
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さて、今日はここまでにして、次回も別の受賞サービスについて書いてみます。
ではまた!
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(2016.6.17記)