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昨日まで、二泊三日で富山出張に行ってきました。富山には、大体月1回はお仕事で行っています。今回も、往復は北陸新幹線でした。
北陸新幹線富山駅のお隣に「黒部宇奈月温泉駅」があります。東京駅からは最短2時間14分の距離です。そして、この駅からほど近いところにYKKの研究開発施設と共に、本社機能の一部が移転しています。
先日 (2016.9.5) 、山本地方創生担当大臣がこのYKK黒部事業所を視察に訪れました。そこで、今日はYKKが本社機能の一部を移転した理由と取り組んでいる課題などについて確認してみます。
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YKKが進める「黒部モデル」
黒部市に北陸新幹線の駅ができてから、YKKグループの吉田忠裕会長は週の半分ほどを黒部で働くようになったそうです。
YKKでは、本社機能のうち人事、経理、財務などの管理部門の移転を2014年度から開始し、現在では200人以上が黒部に移っています。
富山は、YKKが戦争で消失した工場を建設して再出発した地です。黒部にはファスナーや建材の研究開発部門がありました。
そして、2011年3月に発生した東日本大震災をきっかけに本社移転の検討を進め、東京に集中した本社機能を分散し、災害時に事業を続けられる体制を作り上げたのです。
しかし、黒部に移動する社員に必要な住宅が、黒部や富山には不足していました。富山県は、持ち家率や住宅の広さは全国一位ですが、良質の賃貸住宅が少なかったのです。
そこで、YKKが進めたのが「黒部モデル」です。
「黒部モデル」はまちづくり
YKKは、事業所から約4kmの距離の黒部市内の旧社宅跡地3万6100㎡に、賃貸集合住宅や商業施設、保育施設などからなる「パッシブタウン」を計画しました。
全8街区が、2025年までに完成予定で、全250戸800人の入居が見込まれています。社員だけでなく、一般市民も入居可能ということです。
パッシブタウンでは、黒部川扇状地の伏流水を汲み上げ、パイプで循環させることで、夏は涼しく冬は暖かい環境を整えました。更に、夏は富山湾の季節風をうまく取り入れることで、冷房の使用を抑える、といった取り組みにより、エネルギー消費量を同地域の一般家庭の4割程度に抑制しているそうです。
このほか、社員向けには合計100人が住める単身寮を、在来線の黒部駅前に建設中 (2017年3月完成予定) です。
こうして、本社機能の一部移転と表裏一体となった、地域でのまちづくりの推進が図られています。
最後に
「パッシブタウン」から黒部事業所に通うYKKの社員は、職場では海外拠点と直につながって、自社のグローバル競争力を支え、同時に職住近接で仕事と子育てを両立させ、環境負荷の少ない生活を送りながら、地域を支える一員となります。
そして、YKKは企業として、グローバル市場での勝者と地方創生の担い手を両立させているわけです。
また、YKKは地方に本社機能を移転した企業の課税を優遇する「地方拠点強化税制」の適用全国第1号です。
こうしたYKKの「黒部モデル」を視察した山本地方創生担当大臣は、「メリットや課題を参考にして、今後の政策に生かしたい」と話したそうです。
YKKの社員からは「車がなければ移動が難しく、交通インフラの整備が必要」という課題についても紹介があったとか。
交通インフラの整備は、一企業だけでは解決が困難な問題です。
こうした課題に、国や地方自治体がどのように対応していくのか、今後の政策に期待したいものです。
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さて、今日はここまでにしましょう。
ではまた!
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(2016.9.8記)