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さて、昨日は「なぜローカル経済から日本は甦るのか」という本から、グローバル企業 (G) とローカル企業 (L) という考え方をご紹介しました。
今日は、地方創生にとって中心となる「ローカル企業 (L) 」に対して、著者が処方箋を提示する前提条件として挙げている点を見てみたいと思います。
大半の企業と人がグローバル (G) とは無縁である
著者は、ローカル経済圏に向けられる根強い誤解があると指摘します。
以下の図の通り、非製造業の比率は、企業数では88.9%、従業員数では80.6%を占め、製造業はもはやそれぞれ10.5%、18.8%にすぎないのです。
また、非製造業の中小企業比率は企業数ベースで88.4%、従業員数で60.4%で、いずれも製造業の10.3%、10.5%よりも高くなっています。
つまり、ローカル経済圏の企業の問題は、中小企業問題と言っても過言ではないのです。これからの中小企業に関わる主な問題点は、地域密着型の中小非製造業、すなわちローカル経済圏で頑張る中小サービス業の問題なのです。
このように大半の企業と大半の人がグローバル経済圏とは無縁で、全国のローカル経済圏、それも中小企業で生きているという事実を、そうやって生活している私たち自身が正確に理解していないことが多いのです。
ローカル経済圏 (L) をグローバル (G) 経済圏に移動させる圧力
これまでの議論は、グローバル (G) 経済圏をどう広げるかに集中し、ローカル経済圏の人をグローバル経済圏に「移動」させる方法に終始していたと、著者は指摘します。
しかし、グローバル企業は、日本代表としてオリンピックの金メダルを目指すけれど、ローカル企業は、そんな必要はなく市大会、県大会で優勝を狙えるレベルに引き上げることを考えた方が、はるかに現実的です。
そもそも、ローカル経済圏の産業は、グローバルの完全競争ではなく、地域ごとの非完全競争です。ローカルのバス会社は、世界一でなければ生き残れないわけではありません。地域一番になれば、十分生き残っていけるのです。
日本の非製造業の労働生産性は低い
以下の図の通り、日本の製造業の労働生産性は、世界でもトップレベルです。
それに比べて、日本の非製造業の労働生産性は先進国のなかでもかなり低くなっています。アメリカの約半分のレベルで、ドイツやフランスからも大きく水をあけられているのです。
見方を変えれば、ローカル経済圏では生産性に大きな格差があるからこそ、集約化による生産性向上の伸びしろがあると言えるかもしれません。既に、世界的に高水準にあるグローバル経済圏の生産性を上げるより、政策的な効果は高いはずです。
非製造業では、6年前から人手不足に陥っている
中小企業における製造業の人手不足は、2013年第3四半期から始まりました。一方の非製造業では、アベノミクスが始まるずっと前、2010年の第4四半期から人手不足に陥っていたのです。
そして、ローカル経済圏では、今後ますます人手不足が深刻になるので、労働生産性の向上による賃金上昇と流動性を、さらに高めることを考えないと議論を間違える、と著者は主張します。
グローバルの製造業はもとより、ローカル経済圏においても、今後の人手不足経済においては、自動化やIT化といった生産性の向上への取り組みも、やはり重要なテーマです。
業績悪化による退出圧力がない
サービス産業に対する、各種規制の見直しも必要になります。新規参入者に対する、さまざまな規制はありますが、本来は事業者のオペレーションに対して制限をかける「行為規制」が望ましいのです。
新規参入後の行為規制が緩いと、参入していることが既得権化してしまい、業績が悪化しても退出しない圧力が働いてしまいます。
各種の補助金や中小企業保護政策がそれを可能にしているのですが、今後進展する人手不足を考えると、ローカル経済圏での穏やかな退出問題をいかにクリアするかが問われています。
そのためには、必要のない規制を撤廃し、必要であれば賢い規制 (スマートレギュレーション) をかけることが必要になってきます。
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以上、「ローカル企業 (L) 」に対して、著者が処方箋を提示する前提条件を見てきました。次回は、具体的に提示された処方箋を確認してみます。
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では、今日はここまでにしましょう。
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(2016.10.23記)