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さて、当ブログで、先日3回に分けて「なぜローカル経済から日本は甦るのか」という本について、記事をアップしました。(こちら参照)
今日は、この本の中で、ローカル企業に対して著者が提示している処方箋の中で、最重要KPI (主要業績指標) としている「労働生産性」について考えてみます。
ローカル企業の最重要KPIは「労働生産性」
著者は、ローカル企業の KPI (主要業績指標) に、グローバル企業のような資本生産性を設定してもあまり意味はない、と主張します。
労働集約的で雇用吸収力が高いという意味でも、また社会性の高い業務を従業員たちにちゃんと遂行してもらうための待遇保証という意味でも、ローカル企業で最も重要な指標は、労働生産性(単位労働時間当たりの付加価値生産性)なのです。これが高いほど、より賃金を上げられるし雇用も安定化すると、著者は説きます。
労働生産性を上げることができて初めて、今まで2人でやっていた仕事を1.5人程度でできるようになります。単純計算で、賃金は50%上がることになります。
忘れられがちなローカル企業の動静
大都市と地方、大企業と中小企業には色々な意味での格差があります。話題の中心は、大都市と大企業に偏りがちです。
確かに、経済の中心は大都市部であり、多くの投資が大都市に向けられ、インフラも大都市優先であることは間違いがありません。
地方創生を機に、東京一極集中を是正すべく、中央省庁の地方移転について議論がある政治や行政も同様です。
企業に注目すれば、多くの話題はグローバル大企業の動静が中心であり、中小企業の話題というと、大田区の町工場などに限られ、多くのローカル中小企業や零細企業が陽の目を見ることはあまりありません。
大半の企業と人が、グローバル大企業とは無縁
中小企業庁の2016年版中小企業白書によれば、大企業の企業数は1万1,000社 (全体の0.5%) 。これに対し中小企業は380万9,000社 (全体の99.5%) となっています。
また、従業者数も、大企業1,433万人 (全体の29.9%) に対して、中小企業3,361万人 (全体の70.1%) と、圧倒的に中小企業が占めているのが現実です。
そして、大企業の多くは、中小企業の下支えにより、企業活動が成り立っているのです。
それが産業の仕組みであり、それぞれの役割で成り立っています。であれば、対等であって然るべきですが、実際には様々な格差があります。
情報格差の地方と、進まないローカル企業のIT
僕の本業は、ITコンサルタントです。中小企業の情報システムを中心に、業務の効率化を進め、その企業の労働生産性を上げるお手伝いをしています。
東京のクライアントが中心ですが、地方のクライアントのお手伝いもいくつか経験があります。
地方でよく聞くのは、ITの活用に関する情報がなかなか入らない、という声です。そのため、わざわざ東京まで出かけて、情報収集することもあるというのです。
確かに、東京では毎日のように、無料で参加できるセミナーが開かれていますし、異業種交流により最新の情報も得られます。
いくらネットワーク時代になったからといっても、生の情報が得られるのが大都市に偏っているのは、明らかに情報格差です。
さらに、IT活用の情報の多くは、大企業向けの話に偏っています。大企業に適したものが、そのまま中小企業のITに活用できるものではありません。
ローカル企業こそITの活用が必須
それでも、ローカル企業では企業活動のためにITを導入し、活用し、維持していかなければなりません。また、大企業には必ず存在するシステム部門を持てない会社がほとんどです。
「一人情シス」と呼ばれる個人の努力で支えられている会社も少なくありません。そうした会社では、業種毎に作られたパッケージシステムを導入することがよくあります。
パッケージシステム自体は、そう高価ではありませんが、その業種の最大公約数的に作り込まれているため、会社別の業務に適合させるには、それなりのカスタマイズが必要になります。
そこが、システムベンダーの利益の源泉になります。難解な専門用語を駆使して、よく理解できないユーザーを無理やり納得させ (煙に巻き?)、高額なカスタマイズ費用を請求するのが常套手段です。
そういったベンダーとユーザーの間に入り、余計なカスタマイズを防ぎ、コストをミニマイズするのもコンサルタントの重要な役目になります。
今後、ローカル企業の労働生産性を上げようとすると、ITの一層の活用は避けて通れません。しかし、上手にシステムを導入しなければ、却ってコストが上昇し、本末転倒になりかねません。
ローカル企業を元気にすることが、地方創生には欠かせず、それが日本を元気にすることは間違いありません。
というわけで、これから企業経営とITを語るときは、大都市と大企業の論理や視点だけで語るのではなく、必ず地方と中小企業の論理と視点も持つことが必要だと思う次第です。
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では、今日はここまでにしましょう。
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(2016.10.26記)