Challenge Next Stage 〜目指せ!出版への道〜

地方創生・・・グローバル企業 (G) とローカル企業 (L) の棲み分け、対立ではなく補完関係に (3)

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さて、一昨日は、「なぜローカル経済から日本は甦るのか」という本から、グローバル企業 (G) とローカル企業 (L) という考え方をご紹介しました。

そして、昨日は、地方創生にとって中心となる「ローカル企業 (L) 」に対して、著者が処方箋を提示する前提条件として挙げている点を見てみました。

今日は、いよいよ著者が提示している、今後の「ローカル企業 (L) 」に必要な処方箋を確認してみます。
 

処方箋の前提条件

その前に、昨日確認した前提条件をもう一度確認してみます。

  1. 日本企業の構造は、中小非製造業が全体の企業数の約9割、従業員数では約8割を占める
  2. これまでの経済政策の議論はグローバル (G) が中心、しかしローカル (L) は地域毎の非完全競争で別の考え方が必要
  3. 日本の製造業の労働生産性は、世界でもトップレベルだが、非製造業の労働生産性は極めて低い
  4. 非製造業では、アベノミクスが始まるずっと前 (2010年の第4四半期) から人手不足に陥っていた
  5. 各種の補助金や中小企業保護政策により、本来なら退出すべき非製造業がゾンビ化している

以上の前提条件をもとに、以下の処方箋が提示されています。

退出を促し、集約化を進める

「これまでは、債務超過に陥らない限り、地域金融機関は何もしてこなかった。これからは、地域金融機関が適切で的確な『デットガバナンス』を効かせることが大事だ」と著者は説きます。

事業が傾きつつあっても動かないで放置し、いよいよ状態が悪くなってからあたふたするのは、金融機関のあり方として健全ではないからです。

他にも、経営者や親類縁者にまで個人連帯保証を課し、廃業する際には個人破産せざるを得ない制度や、信用保証制度による融資など、過去の人余り状態の時に企業を存続させるために存在した制度の見直しが必要といいます。

こうして退出を促し、集約化を進め、一定の寡占的安定の状態に移行させます。ローカル経済圏では、ある一定の規律の働く寡占的安定をつくったほうがいいからです。一方で、寡占による腐敗は防がなければなりません。

コンパクトシティ化の促進

従来の政策的な発想では、集約というと中核都市に工場を誘致する方向になりがちです。

しかし、ローカル経済圏では、生活サービス型の産業が中心になっていくので、工場ではなく生活圏が妥当です。まず大事なことは、Lの世界において、もっと効率的な公共サービスや高密度の消費構造をつくることです。

限界集落からの穏やかな退出を進め、地方の駅を中心とした中核都市への集約が有効となります。

こうしたコンパクトシティ化の促進で、地方においてもっと効率的な経済社会構造をつくることと、雇用と労働のミスマッチを解消すること、そして若者が結婚し、子育てをし、豊かな人生を送れる社会システム、そんな「Lの世界」をつくり出すことが、待ったなしの政策課題になっているのです。

Lの世界に生きる企業の最重要KPIは、労働生産性

ローカル企業の KPI (主要業績指標) に、グローバル企業のような資本生産性を設定してもあまり意味はありません。

労働集約的で雇用吸収力が高いという意味でも、また社会性の高い業務を従業員たちにちゃんと遂行してもらうための待遇保証という意味でも、ローカル企業で最も重要な指標は、労働生産性(単位労働時間当たりの付加価値生産性)なのです。これが高いほど、より賃金を上げられるし雇用も安定化すると、著者は説きます。

そして、規制や税制などの制度設計においても、予算配分においても、金融行政においても、優秀な経営者、高い労働生産性を実現している企業に有利になるような政策体系、逆に弱者保護の名目で無能な経営者を助けて生産性の高い企業の足を引っ張らないような政策体系を構築すべき、としています。

労働生産性を上げることができて初めて、今まで2人でやっていた仕事を1.5人程度でできるようになります。単純計算で、賃金は50%上がることになります。

人手不足改善には、取り組む順序が必要

深刻な人手不足を少しでも改善するには、まずは伸びしろのある労働生産性を高めるべきです。これは成長のチャンスであり、賃金上昇のチャンスでもあるからです。

それと並行して、やはり国際的に低い女性と高齢者の就労参加率を上げなくてはなりません。

人手不足に対する対策を、グローバル経済圏の経営者に聞くと、十中八九「外国人の雇用」「女性と高齢者の活用」「労働生産性の向上」という順序で答えます。

しかし、島国に長年住んでいて民族同質性が高い日本に、ブルーカラーを中心にした外国人労働者が流入した場合の社会的ストレスを著者は危惧しています。

正しいのは、反対の順序だとします。最初に生産性を上げることを考え、女性と高齢者の就労率を上げることを考え、外国人労働者についてはまずは高度人材から、そして非高度人材については必要最低限の範囲で期間限定型での導入を検討し、最後に移民の問題に入るべきだという考え方です。

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以上、「ローカル企業 (L) 」に対して、著者が提示した処方箋を確認してみました。

著者も最後に指摘していますが、この処方箋の中で、政治的・政策的にハードルが高いのは、おそらく「退出」の問題に正面から取り組むことでしょう。

普通、どうしても万人受けする起業支援、ベンチャー支援のほうに議論が向きがちですが、ローカル企業 (L) の世界の今後の勝負どころは退出のほうにあります。

日本の現状で、そこまでドラスティックに整理・淘汰の方向に舵がきれるか、極めて困難が予想されます。しかし、ここを乗り越えないと、日本という船が沈みかねないのも事実かも…

う〜ん、深くて重い問題を突き付けられた気がします。
 

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では、今日はここまでにしましょう。
 
 
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(2016.10.24記)

富田 邦明

IT関係のコンサルタントをしております。
業務効率化・システム改善だけでなく、経営者視点のリスクマネジメントも同時に行い、人とテクノロジーのシナジー(相乗)効果を最大限にすること、そして、活き活きとした雰囲気で働ける環境作りを目指しています。

コメント

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