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さて、関西電力高浜原発3、4号機について、運転差し止めの仮処分が2016年3月に大津地裁で決定されました。
それから1年経った2017年3月28日に、大阪高裁は、原子力規制委員会の安全審査に不合理な点はないとして、運転差し止めの仮処分を取り消す決定をしました。
大津地裁が決定した高浜原発運転差し止め仮処分とは?
昨年3月に、以下の記事をアップしました。
大津地裁が決定した高浜原発運転差し止め仮処分について思うこと
この記事で書いたのですが、高浜原発をめぐっては、2015年4月14日に福井地裁で運転差し止めの仮処分決定が出た後、その内容を取り消すよう関電が異議申し立てを行い、同12月24日に仮処分が取り消された経緯があります。
そして、昨年 (2016年) 3月に、大津地裁は福島第1原発以降に策定された新規制基準について「公共の安寧の基準になると考えることを、ためらわざるを得ない」として、原発の運転を禁じました。
関電は、この決定を不服として大津地裁に処分の取り消しを求める保全異議を申し立てましたが、大津地裁はこれを退けました。
大阪高裁は、関電の抗告を認める
そして、関電は大津地裁の決定を不服とし、大阪高裁に保全抗告を行いました。
今回、大阪高裁は高浜原発の安全審査に不合理な点はないと判断し、滋賀県の住民側が指摘する具体的な危険性はないと結論付けたのです。
専門家でない司法の判断は、過去の最高裁判例に依拠せざるを得ないのか
このブログで、以下の記事をアップしたことがあります。
原発建設を認めた、1992年の最高裁判例は今でも金科玉条なのか?
1992年の最高裁判例とは、かつて四国電力伊方原発の建設是非を問う訴訟で、建設を認めたもので、これ以降はこの判例が、その後の原発訴訟における司法判断の決定の礎になっているそうです。
当時の最高裁判決では、「原発問題は高度で最新の科学的、技術的な知見や、総合的な判断が必要で、行政側の合理的な判断に委ねられている」と説明されています。
高度な専門性が求められる原発の安全性の判断は政府に任せて、科学的知見のない司法が関わり過ぎるべきではない、という判断です。
よって、大津地裁が高浜原発稼働禁止の判断を示したことは、司法の世界では驚きをもって受け止められ、裁判長を指して、ある評論家は「暴走裁判官」と断じました。
よって、今回の大阪高裁の決定を受けて、滋賀県の住民側が特別抗告などを申し立てて最高裁の判断を仰ぐとしても、過去の判例により退けられる可能性が大きいと思われます。
「安全」か、「安心」か
築地市場の豊洲移転に関して、どのような結論が出るのか、注目されていますが、豊洲を専門家が「安全」と評価しても、東京都民が「安心」するか、という点が焦点になっています。
原発再稼働問題も、専門家が「安全」とお墨付きを与えても、どうしても「安心」に結びつかない住民心理が働いているように思います。
一旦、事故が起これば、何万人・何十万人の生命にかかわる原発問題です。原発安全神話が通用していた25年前の最高裁判断に、ずっと縛られているのは如何なものか…と思うのです。
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さて、今日はここまでにしましょう。
ではまた!
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(2017.4.3記)