「今日は何の日?」シリーズ番外編です。
昨晩から日本中を駆け巡った感のある、ノーベル物理学賞の発表でした。なんと一気に日本人研究者3名の方が同時受賞するというニュースは、自然災害など暗いニュースが続く中で、久しぶりに明るいニュースとなりました。
青色LEDの実用化に成功した中村修二氏とは
赤崎勇氏、天野浩氏のお二人が、世界初の高輝度青色発光ダイオード (青色LED) の開発を実現させたことを受け、その大量生産実現に道筋をつけたのが中村修二氏になります。
それまでに実現していた赤・緑に、青色が加わったことで光の三原色が揃い、全ての色をLEDで実現できるようになりました。
この結果、今では身の回りの映像機器や照明器具、信号機やスカイツリーetc…に広く使われていることは、報道されている通りです。
その中村修二氏ですが、実際に青色LEDの製造方法を発明・開発した時は、徳島の日亜化学工業の一社員でした。
そして、その技術特許の対価を巡り、会社を相手取って訴訟を起こしたことで、過去には一躍有名になったことがありました。
日亜化学工業との特許の対価をめぐる訴訟
中村修二氏は、日亜化学工業社員時代に青色発光ダイオードの開発を社長に直訴し、会社から約3億円の開発費用の使用を許され、研究に没頭します。
会社の命令は無視する、会議にも出席しない、電話に出ない、など通常のサラリーマンとしては失格と言われても仕方のない勤務態度だったそうですが、度量の広い社長のおかげで、破格の研究費により実験を続けることができたとか。
そして青色LED製造方法の発明・開発により、会社は莫大な利益を上げたそうですが、当時中村氏に支給された報奨金は僅か2万円だったそうです。
日本ではあまりにも研究者が冷遇されている、と感じた中村氏は「日本の研究者の地位向上のため」として、会社を相手取り特許の対価の増額について提訴します。
2004年1月には、日亜化学工業に対して中村氏に200億円を支払うよう命じた東京地裁の判決が出ますが、会社側は控訴します。
そして、2005年1月には、東京高裁により日亜化学工業側が約8億4000万円を中村に支払うという和解案が示され、和解が成立します。
この時の一般的な世論は、中村氏に対するバッシングでした。いわゆる金目当てでけしからん、好きな研究をさせてくれた恩を仇で返すのか、という論調です。
当時、勤めていた会社の人事部に属していた富田は、この成り行きを複雑な思いで見ていました。
企業論理として、研究開発費を全額会社が負担し、会社名義で取得した特許にもとづく収益は全額会社のものであり、その特許を開発した社員にどう報いるかは、会社で決めた規程次第というのが常識でした。
そういった風潮の中で、日亜化学工業が規程通り報奨金を2万円支払ったのは、ごく当たり前の企業行動だったのです。
その当時から先進国では、特許取得に貢献した個人に厚く報いることが常識でしたから、中村氏は旧弊な日本の常識に我慢がならなかったのでしょう。
特許庁では、この係争事件以来、企業の特許申請にあたっては従業員側と十分協議しないと申請を受理しないように改めた、と報道されています。
中村氏の著作のタイトルを眺めると、反骨の研究者の姿が浮かび上がってきます。
『怒りのブレイクスルー 常識に背を向けたとき「青い光」が見えてきた』 ホーム社、2001年4月
『21世紀の絶対温度 科学者の眼から見た現代の病巣の構図』 ホーム社、2002年4月。
『好きなことだけやればいい』 バジリコ、2002年4月
『Wild Dream – 反逆、闘い そして語ろう』 ビジネス社、2002年9月
『「バカになれる男」が勝つ!』 三笠書房、2004年1月
『負けてたまるか! 青色発光ダイオード開発者の言い分』 朝日新聞出版、2004年3月
『成果を生み出す非常識な仕事術』メディアファクトリー、2004年5月
「嫌われる勇気」を持つ強さ
ノーベル物理学賞受賞という快挙により、中村氏はこれまでの自分の生き方が正しかったことを、自ら証明することができた、と感じているのでしょうか。
今年読んだ書籍の中でもベストスリーに入るであろう、アドラー心理学を描いた「嫌われる勇気」を思い起こします。
100人のうち99人が右へ行くとしても、自分が左に行くことが正しいと信じるならば、迷わず左を選ぶ強さを、自分のような凡人はなかなか持てません。
中村氏は、訴訟報道により有名になってしまっただけ、世間から酷評され、罵倒され、後ろ指を指され、蔑まれました。それらを受け止め、それでも自ら信じた道をゆく。それはとてつもなく茨の道であったろうと思います。
誰もが中村氏のように生きられるわけではありませんが、スティーブ・ジョブズの言葉を思い起こさないわけにはいきません。
人生は限られている。だから誰かの人生を生きて時間を無駄にしたりしてはいけない。
他者の考えの結論に過ぎないのだから、世の定説に引っかかってはいけない。
他者の考えに惑わされて、自分自身の心の声を聞き逃してはいけない。
そして、ジョン・キム先生の言葉が蘇ります。
結果に対する全責任を負う決意に基づいた選択は、常に正しい。
今日これから自分が行う選択によってもたらされる結果に対して、他人のせいにすることなく自分自身で全責任を負えると断言できるのか、明確に意識して自分に問いかけていこう、と改めて思う水曜日の朝なのでした。
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さて、今日はここまでにしますね。
ではまた!
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(2014.10.8記)