さて、地方創生に大事なのは、その地域の「稼ぐ力」と言われています。
政府の基本方針「まち・ひと・しごと創生基本方針2016」でも、主体はあくまで地域であり、政府はその地域に寄り添い、バックアップしていくという方針を鮮明にしています。
そんな中、東洋経済オンラインに掲載されたある記事が目に留まりました。タイトルは『「美食」で自立するスペインの地方都市に学べ』です。
そこで今日は、こちらの記事に纏められた内容をご紹介しましょう。
小さな地域であっても「稼ぐ仕組み」は作れる
記事ではまず、「人口が減ったら地域は終わり」という先入観を捨て去るようにと言います。
実際にヨーロッパの地方都市の取り組みを見れば、小規模な都市でも生き残る策があることが明白だからです。
日本では、かつて人口過剰時代に国の予算をもとに全国一律の都市開発を進めました。その結果、特色のない地方ほど人口減と共に衰退することになったのは必然だと言えます。
美食をポイントに成長を続けるヨーロッパの地方都市
成功したヨーロッパの地方都市の取り組み事例として、まずスペイン・バスク自治州のサン・セバスチャンが挙げられています。(画像クリックで拡大)
同市は、18万都市という規模にもかかわらず、欧州はもとより、世界中から人を集め、産業形成に成功しているそうです。
ここには、世界遺産も大規模工業地帯もありません。成功のキーポイントは「美食」です。同市には、ミシュランの星付きレストランが多く存在し、人口一人あたりの数が世界一だとか。
また、旧市街地にはおいしいピンチョスがあるバルが多数存在し、食べ歩きができます。これらのお店は、メニューを競い合うことで食のレベルアップが常に図られています。
(画像出典元はこちら)
同市は、そのターゲットを観光客数ではなく、観光消費額に直結する「食」に絞ったのが画期的です。
歴史観光は大抵一度見れば終わりですが、食事は最低一日三回。おいしいピンチョスがそろうバルの食べ歩きをすれば、一日に数軒の店を回ることになる。つまりは、一日に何度も観光客の財布を開かせることができるわけです。観光消費額うなぎ登りです。
「食」と連動して成長するサービス業と一次産業
更に、美味しいお店がたくさんあるために、到底一日では回りきれません。市内のめぼしい店を回るにしても、数日滞在せざるを得ないため、ホテルなどのサービス業も潤います。
さらに、新鮮な魚介類、畜産物、その他さまざまな原材料は基本的に地元で調達されることで、一次産業の発展にも寄与しています。
しかし、長い時間をかけて「食」を軸にした国際的な観光都市競争力を築きあげたわけではなく、実は1990年後半からの取り組みだそうです。
ただ、同市は1800年代から自ら料理をして飲み楽しむ「美食倶楽部」という地域文化を含めて食文化の蓄積がありました。ただ、産業にはできていなかったのです。
しかし、過去の蓄積に目を向け、磨きあげ、サービス産業に転換したことで「美食のまち」として成功しました。
その地域に眠る原石を掘り起こし、磨き上げ、価値あるものとして提供していく、ここに「稼ぐ力」に結び付けるヒントがあります。
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さて、長くなったので次回に続けます。
ではまた!
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(2016.6.9記)