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さて、昨日は「国家戦略特区等における新たな措置に係る提案制度」の概要について確認しました。
そこで、今日は、過去どのような提案がなされ、それがどのように実現しているのか、具体的な事例を見てみましょう。
国家戦略特区に指定されなくても事業が可能となる方法
国家戦略特区については、前回ご紹介した通りですが、大都市などの特定地域に限られています。
しかし、国家戦略特区以外でも「やりたいこと (事業) 」はあるわけで、それが大胆で前例がないものであればあるほど、国の制度を変える (規制改革) 必要があるでしょう。
そうした時に、「特区の提案」を行うことで、事業が可能になることがあるのです。
◎ 実は、現行制度の中で、できる可能性がある
例) 農地転用による農用地区域での植物工場の設置 など
◎ 特区ではなく、全国措置として実現
例) 通販免許でインターネット販売できる酒類の範囲拡大 など
◎ 構造改革特区で実現
例) 50歳以上の就労を重点的に支援するハローワークの設置 (予定)
国家戦略特区の他に、規制改革のための特区には「構造改革特区」もあります。国家戦略特区が、数を厳選して総合的・集中的に規制改革を行うのに対して、構造改革特区は、1つ1つの規制改革をきめ細かく行うものです。
上に挙げた事例は、すべて特区提案がきっかけで実現したものです。まずは「特区の提案」をしてみることがファーストステップになるのです。
養父市 (やぶし) の事例
兵庫県北部、但馬地域に位置する養父市は、中山間地農業の改革拠点として、国家戦略特区に指定されています。特区のフロントランナーとされています。
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養父市では、農業の担い手不足、増える耕作放棄地という、全国各地の農村地域が抱えている共通の課題がありました。
そこで、こう考えました。
「農地の集約を加速する仕事を、農業委員会に代わって市でできないか?」
農業委員会は、教育委員会などと同様、市町村単位で設置が義務付けられています。主に、農地売買や農地転用に際し、農地の無秩序な開発を監視・抑止する役目を担っていて、地方自治法のほか、農業委員会等に関する法律に規定されています。
このため、農地の集約を加速する仕事を行政が勝手に行うことはできません。つまり規制が存在していました。これは国が定めている制度なので勝手に変えられません。そして、市が直接規制省庁に相談するのも気がひけるものです。
そこに登場したのが「特区の提案」です。養父市は、他の項目を含めて平成25年8月に内閣府に「特区の提案」を行いました。
提案を受けた内閣府は、特区担当大臣や民間の専門家が検討し、直接規制省庁と折衝を行いました。そして、思いきった提案をした養父市を、特区に指定して事業を実現させたのです。
平成26年3月、新たに特区に指定された養父市の提案は、実際に以下のような効果を挙げました。
農業委員会と市の事務分担
農地の権利移動処理期間が短縮 18日⇒8日
農地の権利移動許可件数が増加 40件⇒63件 (年間)
農業生産法人の設立要件緩和
これまでの10年で4社 ⇒ この1年で10社の企業誘致成功 など
最後に
各種の規制は、必要不可欠の規制もあれば、既得権益にしがみつく輩が手放さない規制まで多々あると思います。
一旦できた規制は、既成事実化してしまい、なくすことは非常に難しくなります。特に規制を変えたい地方の行政機関と中央の規制省庁が相対した場合、地方の行政機関はなかなか太刀打ちできないでしょう。
そこで、内閣府が間に入り、調整役を務めることで政治が主導する形となり、規制改革が前に進むことは容易に想像できます。
今回の (2016年8月) の内閣改造が行われるまで、その政治のリーダーは石破茂担当大臣でした。睨みもきいて、大いに指導力を発揮したことと推察しています。
さて、今度の担当大臣である山本幸三氏の手腕は如何に?山本幸三氏については、当ブログの記事でもご紹介していますが、今後の規制緩和の動きにも注目していきたいと思っています。
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ということで、今日はここまでにしましょう。
ではまた!
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(2016.8.22記)