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さて、「今日の一言メモ」第240回です。
「時節感当」
間に台風の記事やラグビーW杯の記事を挟みつつ、最近のブログ記事で、世阿弥の「離見の見」「初心忘るべからず」「衆人愛敬」「稽古は強かれ、情識はなかれ」という言葉をご紹介してきました。今日も、世阿弥の言葉を続けます。
「時節感当 (じせつかんとう) 」とは、能役者が、楽屋から舞台に向かい、幕が上がり橋掛かりに出る瞬間を指しています。
幕がぱっと上がり、役者が見え、観客が役者の声を待ち受けている、その心の高まりをうまく見計らって、絶妙のタイミングで声を出すことを「時節感当」と言い、これは世阿弥の造語です。
タイミングの大切さ
この言葉は、タイミングを掴むことの重要性を語ったものです。どんなに正しいことを言っても、タイミングを逃してしまうと、他の人には受け入れられません。
商談などの交渉事や、案件を上司に図る時など、「タイミングを逸して失敗した」といった経験は、誰にでもあるものです。
タイミングが人の心の動きのことだとすれば、人の心を掴む瞬間を逃してしまった、ということになるでしょう。
世阿弥はこう言っています。「これ、万人の見心を、シテ一人の眼精へ引き入るる際なり。当日一の大事の際なり。」(万人の目を主役に引きつけることが、何よりも大事だ。その「時節」に当たることが必要なのだ。)
「巧遅は拙速に如かず」
正しいだけではだめで、その正しさを人々に受け入れてもらうタイミングを掴むことが重要というわけです。
日頃、自分の都合だけで事を進めると、うまくいかないことが多いです。急がば回れで、周りの状況や相手の心情なども推し量り、「ここ!」というタイミングで進めたいものです。
「巧遅は拙速に如かず」という言葉もあります。上手だが遅いよりも、下手でも速いほうがよいという意味ですね。
上司から至急の資料提出を求められているのに、綺麗なパワポ資料を作ってしまったりする例が考えられます。メモ用紙に手書きの箇条書きで殴り書きしたものを迅速に提出した方が、よっぽど上司に喜ばれるわけです。
ことほど左様にタイミングは重要なので、気をつけたいですね。
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さて、今日はここまでにしましょう。
ではまた!
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(2019.10.15記)