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さて、昨日はふるさと納税で北海道一の納税額となり、保育園の無料化をして、お母さん達を働き手として活躍させている北海道・上士幌町についてご紹介しました。
上士幌町は、ふるさと納税で成功した例ですが、一方で、ふるさと納税に頼りすぎると地方衰退の罠に落ち込むと警鐘を鳴らしている、東洋経済ONLINEの記事がありました。(こちらの記事参照)
今日は、その内容を確認してみましょう。
「ふるさと納税」のおさらい
「ふるさと納税」は、そもそも地方で生まれ育った人や都市部に住む人が、都市部にいながらふるさとに納税をすることで、地方を応援することになるという税制優遇策でした。
たとえば、5つの地方自治体に1万ずつ合計5万円を納税すれば、2,000円を超える4.8万円が住民税・所得税から控除され、さらに5つの地域から返礼品がもらえるため、個人にとってはかなりお得な内容です。
一方で、地方自治体が「ふるさと納税」を獲得するため、高額の返礼品競争に走った結果、総務省が警告を出したことは記憶に新しいです。
このままでは、地方にとっては活性化どころか、産業も財政も含めてマイナスとなる危険性がある、と記事では指摘しています。
地方衰退につながる3つの歪み
そして、記事ではふるさと納税が地方衰退の要因となり得る、3つの歪みを以下の通り指摘しています。
(1) 税金頼みの地方産品の「安売り」が招く歪み
(2) 地元産業の「自治体依存」の加速という歪み
(3) 納税増加=歳出拡大という地方自治体財政の歪み
いずれも、ふるさと納税というカンフル剤の副作用とも言えます。
それでは、それぞれを簡単に纏めてみましょう。
税金頼みの地方産品の「安売り」が招く歪み
地方にふるさと納税されると、自治体はその土地の特産品などを買い上げ、返礼品として送ります。
一見良さそうに見えますが、これは地方産品の価値が正当に認められ、市場取引が拡大しているわけではないのです。
それがリピートオーダーに繋がり、売上が持続的に拡大すれば良いのですが、一過性のものに終わる可能性が高いともいえます。
このままの状態を継続すれば本来の競争力をそぎ、地方の衰退を加速させてしまう補助金と同じ作用を生み出す怖れがあるのです。
地元産業の「自治体依存」の加速という歪み
自治体が受け取るふるさと納税額は大きくなるにつれ、「返礼品」として地元企業・生産者から買い取る商品総額も大きくなっていきます。
支払いが確実、すなわちつぶれない自治体が相手ですから、地元企業・生産者にとっては纏まって商品を買い取ってもらえる「おいしいビジネス」です。
もし、自治体への短期的な売上を優先してしまい、従来の販売チャネルへの商品供給を疎かにしたら、マーケットは広がらず自治体依存度を高めることになってしまいます。
納税増加=歳出拡大という地方自治体財政の歪み
そもそも地方自治体は、地元から得られる税収が少ないため、独自財源となる「ふるさと納税」による税収増はとても魅力的です。
現在では、地元税収を超えるふるさと納税金額が集まる自治体が出てきたため、ますます躍起になります。
そして、ふるさと納税を獲得すると、一過性の収入であるにもかかわらず、まるで国から得た補助金のように「予算としてどう使うか」という話になりがちだと言うのです。
その結果、毎年予算が必要となるさまざまな住民サービス系の事業を立ち上げて、移住促進などの人口増加を目指す「サービス合戦」に陥る危険があります。
従来通りの予算を使い切る発想で競争をしていたら、ふるさと納税が地方にいったところで、活性化なんて不可能な話です。
最後に
記事の最後に次の記載があります。
そもそも地方が独自の魅力を作り出し、維持していくのに必要なのは「短期的なもらうお金」ではなく、自分たちの価値観を持って「継続的に稼げる仕組み」です。
政府が定めた「まち・ひと・しごと創生基本方針2016」においても、地域の稼ぐ力の底上げや雇用創出に向けて、さまざまな方針が示されました。(こちらの記事参照)
主役はあくまで地方なのです。地方の活性化を目指す限り、予算を獲得して使い切るという発想ではなく、ちゃんと収支が拡大する「事業」を自分たちで企画立案し、そのための資金として獲得したふるさと納税を最大限活用する必要があります。
だからこそ、返戻品で釣ってふるさと納税を競い、集めたお金を予算として消化するような浅はかなやり方は改めなくてはいけないわけです。
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さて、今日はここまでにしましょう。
ではまた!
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(2016.6.27記)