(画像出典元はこちら)
さて、以前当ブログで「ロボットタクシー」の開発が進められているという記事をアップしました。
記事では、ロボットタクシーのようなテクノロジーが進展すれば、高齢化が進む地方で住民の足として低コストの運用が可能となり、もっと高齢者が活躍できる場が広がることが期待できる、と書きました。
ただ、ロボットタクシーの実現には、まだ時間がかかるのが現実です。そうした中で、先日 (2016.5.26)、スマートフォンやタブレットのアプリを使って一般の自家用車で市民や観光客を有償で運ぶサービス「ささえ合い交通」の出発式が、京都府京丹後市丹後町庁舎で開かれました。(こちらの記事参照)
そこで、今日は「ささえ合い交通」の仕組みを確認してみることにしました。
タクシー・ハイヤーではない仕組みを実現
近年、地方の過疎地で特に公共交通の衰退は著しく、路線バスによる輸送人員は、1970年代のピーク時から半分以下に落ち込んでいるそうです。
更に、京都府京丹後市では、2008年にタクシー事業者が撤退してしまいました。このため、2014年から小型の市営デマンドバスが運行を開始しましたが、利用には事前の予約が必要なうえ、乗車できる曜日や地域も限定されていたため、使い勝手が悪いものでした。
当然のことながら、住民の間から、もっと利用しやすい新たな交通手段を求める声が上がってきました。
そこで実現したのが「ささえ合い交通」です。日本国内では自家用車で乗客を有償運送することが「白タク」として原則禁止されていますが、過疎地など公共交通機関の空白地帯は特例として認められています。
これは、道路運送法78条2号に基づく「公共交通空白地有償運送」にあたり、「ささえ合い交通」はこの制度に従い、過疎地の交通弱者対策としてスタートしたのです。
スタートにあたって、二種免許を持たないドライバーでも、国土交通省認定の1日研修を受講することで、乗客を乗せて運べるようにしました。ドライバーの自家用車にドライブレコーダーを設置し、アルコールチェックを義務化することなどで安全面も強化しているそうです。
「ささえ合い交通」の仕組み
「ささえ合い交通」は、それまで市営デマンドバスを運行していた地元のNPO法人「気張る!ふるさと丹後町」が、市の補助金を得て始めた事業です。
スマートフォンやタブレットのアプリで車を呼ぶためのシステムは、ライドシェア世界大手の米ウーバー・テクノロジーズ (Uber) 日本法人が提供しました。
「ささえ合い交通」では、市民18人の所有する自家用車を使います。利用者が市民ドライバーにアプリで乗車を頼むと、Uberのシステムが近くにいる車のマッチングを行い、迎えに来て目的地まで送ってくれる仕組みになっています。
運行は午前8時から午後8時までで、年中無休。乗車できる地域は京丹後市丹後町、降車できる地域は京丹後市内に限定されていますが、地域の住民だけでなく、観光客も利用できるようになっています。
利用者は、Uberのアプリをダウンロードし、登録すればすぐに利用できます。運賃は最初の1.5キロまでが480円と、路線バスより高いですが、タクシーよりは安く設定されています。初乗り運賃以後は、1キロ当たり120円が必要です。
過疎地の交通弱者対策として普及するか
Uberのライドシェアは、世界70の国と地域で自家用車の配車事業を展開しています。しかし、Uberに対して日本の規制が厳しいため、国内での事業展開は東京都心部でのハイヤー、タクシー配車に限定されてきました。
そして、ライドシェアについては、タクシー業界を中心に反対の声も根強いようです。事故時の対応や安全性が疑問視されているからです。
こうしたシェアリングエコノミー企業は、利用者間のマッチングに徹することが多く、サービスの質や安全性を担保する仕組みが既存業界より弱いとされています。こうした点は、急ぎ改善が求められるでしょう。
ただ、過疎地の人口減少は今後も進み、高齢化の進行とともに交通難民がさらに増えることが確実視されます。
それぞれの地域事情に合う効率的な新しい交通手段の確保は、待ったなしの課題です。新たな交通手段として、ライドシェアに対する自治体の関心は高まっています。
高齢化の進展と共に、高齢者の免許返納が求められてきましたが、車という足を奪われることで家に引き籠もりがちになり、活動的な生活ができなくなる例も増えています。
ロボットカーの開発や、ライドシェアの普及は、そうした対策に有効だと思います。いろいろと問題はあるでしょうが、知恵を絞って解決していって欲しいものです。
・・・・・・・
さて、今日はここまでにしましょう。
ではまた!
・・・・・・・・・・・・
(2016.6.29記)