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さて、一昨日・昨日と、2016.9.12に開催された「国家戦略特区シンポジウム」のプレゼンテーションコーナーで発表があった、改革市長による地方創生への取り組みをご紹介してきました。
第1回の小泉一成成田市長、第2回の奥山恵美子仙台市長に続いて、今日は第3回、菅良二今治市長です。尚、「国家戦略特区シンポジウム」については、こちらの記事をご覧下さい。
今治市の取り組み経緯
今治市は、『「しまなみ海道」と「今治新都市」を中核とした「国際観光・スポーツ拠点」の形成を目指して』というテーマを掲げ、地方創生に取り組んできました。
2015年 (平成27年) 6月5日に開催された、国家戦略特区ワーキンググループの提案に関するヒアリングで、愛媛県と今治市が共同で提案を行っています。
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そして、先日の「国家戦略特区シンポジウム」の発表では、以下の4点について発表がありました。
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長年にわたり特区申請してきた獣医師養成系大学の設置
特に、獣医学部の新設については、長年の悲願でした。2007年 (平成19年) 11月に初めて特区申請して以来15回にわたって、愛媛県と今治市が共同で構造改革特区の提案を行ってきましたが、実現に至っていませんでした。
それが、2015年12月にやっと国家戦略特区として認定を受けたのです。
獣医師養成系大学、そして、学部の新設は、文部科学省の告示により、1966年 (昭和41年) 以降50年間にわたり、全国で一度も認められていません。獣医師を養成する大学は全国に16校ありますが、定員はこの半世紀ほど930人で変わっていないそうです。
特に、四国は空白地となっており、獣医師が慢性的に不足しているとのこと。愛媛は畜産が盛んで、県は「愛媛甘とろ豚」「愛媛あかね和牛」などブランド化に力を入れています。そうした状況で、獣医学部の 新設は悲願だったわけです。
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文部科学省と日本獣医師会の対応
これに対して、規制官庁の文部科学省は、次のような対応をとってきました。
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つまり、「全国的な見地から対応すべきことであり、特区を活用することは困難」ということです。
また、特区提案に対する「社団法人 日本獣医師会」の見解が、過去の時点 (2010.8.5) で公開されています。もちろん「絶対反対」の立場であり、その見解の最後は以下のように締め括られています。
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また、昨年 (2015.10.2) 開催された「平成27年度 第2回 全国獣医師会会長会議」の概要が公開されています。(こちらの資料参照)
この資料の最後2ページには、「日本獣医師政治連盟の活動報告」というパートがあります。この中には、当時の石破大臣に面談した様子や、その時に石破大臣から「(政治連盟の) 北村委員長から毎日のようにメール、電話があり、本当に参った」という話があったことまで記載されています。
まとめ
先日アップした、成田市長の発表内容の中で、特区を活用して国際医療福祉大学の設置に漕ぎ着けたことをご紹介しました。
今治市も、これに続いて獣医学部の新設を目指していますが、行く手にはまだまだ難関が待ち構えていそうです。
上記「平成27年度 第2回 全国獣医師会会長会議」の概要最終ページを見ると、日本獣医師会の藏内 (くらうち) 会長が次のように発言しています。
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これを読むと、やはり族議員・規制官庁 (文部科学省) ・既得権益層 (日本獣医師会) 三位一体のスクラム=岩盤規制の構図が明確に見えてきます。
文部科学省の回答にあるように「全国的な見地から対応すべきことであり、特区を活用することは困難」とするならば、特区の意味がなくなる気がします。
ただ、やみくもに規制を取っ払えばいいわけでは、もちろんありませんが、特区ならではのチャレンジをして、成果が挙がればそれは岩盤規制の突破口になるでしょう。
そういう意味では、新設が決まった成田市の国際医療福祉大学、新設に向けて前進中の今治市の獣医学部については、是非実績を挙げて欲しいと思う次第です。
以上、3回に分けて規制改革に挑む国家戦略特区の3市長の取り組みをご紹介しました。
国家戦略特区に認定されるまでの道のりの険しさ、認定されてからも個別事業を阻む規制の厚い壁の一端が見えてきます。
これまでの政権が先送りしてきた岩盤規制の問題を、安倍政権のうちにどれだけ道筋をつけられるか、そして次期政権がどのようにその道を受け継ぐのか、予断を許しませんが、きちんと見届けたいと思います。
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では、今日はここまでにしましょう。
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(2016.9.24記)